AIを会社に入れたけれど、対話に使ったり、作業の一部が少し速くなったりで止まっている。そういう話をよく見聞きします。多くの場合、手元の作業を1個ずつ速くすることに意識が向きがちなのですが、私はもう少し違う場所に立っています。私は自分の事業の情報をAIに読ませ、手順や役割を決め、いくつかの作業を自動で回す形にして、Web運用から発信までを一人で進めています。この記事でお伝えしたいのは、便利なツールの使い方ではなく、事業の流れごと自分の形に作り替えるという考え方です。研修でお伝えしているのも、突き詰めればこの一点です。

「毎回、同じことを自分でなぞっている」に気づいた

きっかけは、大それたものではありませんでした。私は動画の字幕を、1から秒数を指定して打っていく作業がずっと嫌でした。ここで何秒、ここで切り替わり、次はここから何秒。喋りに合わせて位置と秒数を手で入れていく。1本作るたびに、これを毎回やるわけです。

やっている最中は、そこまで気にならなかったりします。手は動いているし、動画はできあがっていくので。ただ、次の動画でもまた同じことをやって、その次でもまた同じことをやって、と続くうちに、あれ、私は毎回まったく同じ手順を人力でなぞっているな、と気づいたんです。

この感覚が、私の中ではけっこう大きくて。AIやITで一部の作業が速くなっても、この根っこの面倒くささは、実はそんなに減らないんですよね。字幕を打つスピードが多少上がっても、毎回、位置と秒数を人が決めて入れていくという手順そのものは残ったままです。枝葉が速くなっただけで、幹はそのまま、みたいな状態です。

だから私は、ツールを探して少し速くするという方向にはあまり気が向きませんでした。そうではなくて、この手順そのものを、自分の作り方に合わせて別の形にできないか、と考えるようになったんです。

事業の流れごと、自分の形に作り替える

私の動画は、だいたい同じレイアウトで、同じような素材で、日々作っています。喋りを録って、字幕を乗せて、シーンごとに素材を置いて、概要欄を書いて。毎回、ほぼ同じ流れです。だったら、その流れごと自分専用の形に作り替えてしまえばいい、と考えました。

そこで、自分用の仕組みを作りました。仕組み自体は大げさなものではなくて、音声から文字起こしをして、喋る秒数に同期して、決めた位置に字幕が自動で入る、というのが核です。あの「1から秒数を指定して字幕を打つ」作業が、まるごと消えました。ついでに、シーンで区切って素材の配置を出したり、文字起こしと登録した情報から概要欄やハッシュタグを作ったりもできるようにしました。いまでは、音声を録っただけで、動画制作の流れがだいたい自動で進んでいくような状態になっています。

これは作って満足して終わり、ではなくて、いまも私自身のYouTube運用で日々使っていて、日常の作業がこれで回っています。私が「作った人」であると同時に「使い続けている人」でもある、という感覚に近いです。この考え方は、たとえば定型作業を自分で組んで自動化する話や、何段階かの作業をAIに任せる話にもそのままつながっていきます。

同じことを、発信の別の場所でもやっています。私は自分のサイトのアクセス解析データを毎日AIに読ませて、どこがうまくいっていて、どこを直すか、次に何を試すか、を一緒に考える形にしています。数字を眺めて終わりにするのではなく、読む、直す、また測る、という流れを回している、という言い方が近いです。ここも仕組みの詳細はAIにアクセス解析を読ませる話にまとめています。

こうして並べてみると、共通しているのは「単発で便利にする」ではなく「事業の流れそのものを自分の形にする」という点です。だから、その仕組みは私の手元に残り続けます。

正直に言うと、作るのには手間がかかりました

良いことばかりに聞こえるかもしれませんが、正直に書いておきます。仕組みを作るのには、それなりに時間がかかりました。字幕を手で打っていたほうが、その場だけ見れば速かった、という日もあったと思います。

それでも、あの面倒くささを毎回引きずったまま何十本も作り続けることを思うと、私はこっちのほうが良かったな、といまは感じています。最初にまとめて手間をかけて、あとはその流れに乗る、という選び方です。どちらが正しいという話ではなくて、そういう選択肢がある、ということだと思っています。

もう一つ正直に言うと、いきなり全部を作り替えたわけではありません。まずは一番嫌だった字幕の部分から手をつけて、動くようになってから、少しずつ範囲を広げていきました。事業を細かく分けて、どこが根っこで、どこをAIに渡せそうかを見つけていく。その積み重ねだった、という感覚です。

研修でお伝えしているのは、この作り方の縮小版です

私が研修でお伝えしているのは、この「自社版」を、受講される会社が自分で作れる状態になることです。私が代わりに何かを作って納めるのではありません。それだと、その仕組みの中身は会社の中に残らないからです。

自社の事業のどこに、毎回同じ手順をなぞっている作業があるのか。そこをどう分けて、どの情報をAIに渡し、どんな役割や手順を決めれば回り出すのか。その見つけ方と組み方を、実際に手を動かしながら一緒に確かめていく。それが、私がやっていることの縮小版として各社の手元に残る、という形を目指しています。会社の内側にAIを組み込む研修の考え方は法人向けのIT・AI研修のページにまとめているので、興味があればのぞいてみてください。

AIに詳しい人になってほしい、という話ではないんです。詳しさは、使い続けていれば後からついてきます。それよりも、自分の事業を眺めて「ここは毎回同じことをなぞっているな」と気づける目と、それを自分の形に作り替えてみる手のほうが、たぶん長く効きます。

あなたの事業の毎日の中に、「毎回、同じことを自分でなぞっている」作業は、どこにあるでしょうか。そして、その流れごと、自分の形に作り替えられるとしたら、まずどこから手をつけますか。