AIツールを入れたのに、思ったほど業務が変わらない。そういう声をよく見かけますし、相談の場でも聞きます。使ってみると賢いし、答えも返ってくる。それなのに、日々の仕事の流れはあまり変わっていない。私の感覚では、その多くは「つなぎ」が足りていないことが原因なのかなと思っています。AIは賢い頭のようなもので、それだけでは業務は回りません。頭に何を渡すか、出てきた答えをどこへ運ぶか、この手足にあたるIT側の作り込みが無いと、AIは便利な相談相手のまま止まってしまう。今日はその「つなぎ」の話を、私の実感から書いてみます。
賢い頭だけあっても、業務は動かない
AIツールを開いて、質問を打ち込むと、いい答えが返ってくる。この体験そのものは、確かにすごいんですよね。はじめて触った人が感心するのは、よく分かります。ただ、よく考えると、この一連の流れの中で動いているのは「人がAIに話しかけて、人がその答えを読む」ところだけなんです。
業務のデータをAIに渡すのも人、答えを受け取って次の作業に反映するのも人。AIは賢い頭として真ん中に座っているけれど、その頭に情報を運ぶ手も、答えを次に届ける足も、ぜんぶ人がやっている状態です。これだと、AIがどれだけ賢くても、業務にかかる人手はあまり減りません。むしろ「AIに聞く」という工程が一つ増えた分、忙しくなることさえある気がします。
ここが、入れても変わらない、と感じる正体なのかなと思っています。頭は手に入れたけれど、手足がついていない。だから頭は賢く回っているのに、業務という体は動かないままなんですよね。
つなぎとは、入口と出口と、既存業務との接続のこと
では、その手足にあたる「つなぎ」とは具体的に何かというと、私は三つに分けて考えています。入口、出口、そして既存業務との接続です。
入口というのは、AIに渡すデータがどこから来るか、です。毎回、人がファイルを開いてコピーして貼り付けているなら、それは入口が人の手でつながっている状態です。ここを、業務のデータが置いてある場所から自動で拾ってくる形にしておくと、渡す手間がまるごと消えます。
出口というのは、AIが出した答えがどこへ行くか、です。返ってきた文章を人が読んで、別の資料に書き写して、誰かに送る。この後工程が人手のままだと、せっかくの答えも人の作業を待つことになります。出てきた結果を決まった場所に記録したり、次の担当者に自動で通知したりするところまで作っておくと、答えがそのまま業務の流れに乗ります。
そして既存業務との接続。会社にはすでに、日々使っている表計算や、問い合わせのフォームや、社内の連絡の仕組みがあります。AIをこの既存の流れの途中に差し込めないと、AIだけが別の島に浮いてしまう。私が「つなぎ」と呼んでいるのは、この入口・出口・既存業務との接続を、ITでちゃんと配線しておくことです。


つなぎが無い例と、ある例
つなぎが無い状態というのは、たとえばこういう感じです。問い合わせのメールが来るたびに、担当者が本文をコピーしてAIの画面に貼り、要点を出してもらい、その答えを見ながら手で返信の下書きを作り、別の管理表にも手で書き写す。AIは要点を出すところだけ手伝っていますが、その前後はぜんぶ人の作業のままです。これだと、AIを入れる前と後で、担当者の手間はそんなに変わらないんですよね。
つなぎがある状態というのは、この流れの配線までできている状態です。問い合わせが届いたら、その本文が自動でAIに渡り、要点と返信の下書きが作られ、担当者が確認して直せる形で目の前に並び、確定した内容が管理表にも自動で残る。人がやるのは「確認して直す」という判断のところだけになります。同じAIを使っていても、入口と出口が配線されているかどうかで、手間はだいぶ変わってきます。
大事なのは、賢い答えを出す部分は、どちらの例でも実はそんなに変わっていない、というところです。差がついているのは、AIの賢さではなく、その周りの配線のほう。だから私は、AIの導入を考えるとき、AI単体でなく、この手足にあたるIT側の作り込みまで含めて考えるようにしています。普段、開発の手も動かしているぶん、頭の部分だけでなく、この配線のところまで一緒に見られる、というのはあるかもしれません。
もし、自分たちの業務でこの入口と出口をどうつなぐと効くのかを一緒に見てみたい、という段階の会社さんがいれば、業務自動化の相談という形でそのあたりを扱っています。配線が大きくなって独自の仕組みとして組む必要が出てくれば、システム開発のほうにつなげることもあります。
つなぎを作るときに、つまずきやすいところ
ただ、つなぎを作れば何でも解決する、という単純な話でもないと感じています。私が気をつけているのは、全部を一気につながないことと、人が確認する場所を残しておくことです。入口から出口まで業務のすべてを自動で流そうとすると、作るのも大変ですし、途中で一か所詰まると全体が止まります。だから、まず一番手間のかかっている一本の流れだけを配線して、そこが回るのを確かめてから広げていく。そして、完全に自動で流すと、AIが間違えたときに間違えたまま次へ進んでしまうので、答えを人が確認して直せる一点は、流れの中にあえて残すようにしています。
もう一つ、扱うデータの中身にも注意が要ります。個人情報や、社外に出してはいけない情報を、そのまま外のAIに渡す配線を組んでしまうと、便利さと引き換えに別の問題を抱えることになります。何を渡していい情報とするかは、つなぎを作る前に決めておいたほうがいいところだと思っています。具体的な配線のやり方は、決まった手順をつないでいく繰り返しの定型作業を自動化する進め方や、実際に自分の会社の業務でこの入口と出口をつないで回した自分の会社の業務をAIで回した実例のほうで、もう少し手を動かして書いています。
頭ではなく、手足を見てみる
振り返ると、AIを入れても変わらないと感じるとき、私はつい「AIの賢さが足りないのかな」と頭のほうに目が行きがちでした。でも、たいていの場合、頭はもう十分に賢いんですよね。動いていないのは体のほうで、その原因は、頭と体をつなぐ配線が無いことだったりします。
だから、AIを入れたのに業務が変わらないな、と感じたときは、AIそのものを疑う前に、その周りの入口と出口を見てみると、詰まっている場所が見えてくることがあるかなと思います。データはどこから来ていて、答えはどこへ行っていて、その道のりのどこを人が手で運んでいるのか。そこが分かると、次に何を配線すればいいかが見えてくる気がしています。
あなたの会社で使っているAIは、業務の流れの中に配線されているでしょうか。それとも、賢い相談相手として、まだ別の島に置かれたままでしょうか。


