保護者から「中学生の週2回コースは月いくらですか」と質問された。この返信を作るためにAIへ入力したのは、「週2回の料金を聞かれたので、保護者への返信を作ってください」という一文だけです。月額料金や入会金、授業時間などは、プロジェクトに置いた料金表とFAQをもとに回答しています。

料金表とFAQをプロジェクトに置いたうえで、返信の作成だけを一文で頼んだ例。月額や入会金は資料から拾われています。
毎回説明していた前提や、その都度貼り付けていた資料を、一か所にまとめておく。それを可能にするのが、ChatGPTやClaudeにあるプロジェクト機能です。この記事では、自分の仕事でも同じように使えるように、作り方と確認のしかたを順に説明します。学習塾の例で進めますが、考え方はサロンや士業、社内の問い合わせ対応など、繰り返しのある仕事ならそのまま応用できます。
なお、この記事の画面はChatGPTを使っています。Claudeでも、プロジェクト指示とプロジェクトナレッジに分けて、前提や資料を置くという基本的な考え方は同じです。ただし、名称や画面の位置、過去チャットの扱いは異なります。
プロジェクト機能で何が変わるのか
ふだんAIに相談するとき、新しいチャットを開くたびに、自分の状況や方針を一から書き足していないでしょうか。プロジェクト機能を使うと、その前提をまとめて置いておき、必要な情報がそろった状態から会話を始められます。
ここで、仕組みを正確に押さえておきます。AIの回答は、その時点で参照できる会話、プロジェクト指示、追加した資料、利用可能な記憶などに左右されます。逆に言えば、必要な情報が参照範囲に入っていなければ、こちらが期待している前提は考慮されません。だから、回答時に参照してほしい情報は、あとで説明する「プロジェクト指示」か「情報源」として、はっきり置いておくのが安全です。
過去のチャットをどこまで参照するかは、サービスやプラン、設定によって異なります。その挙動に頼るのではなく、前提を明示的に置く。この発想そのものはコンテキストエンジニアリングとはでも整理していますが、ここでは手を動かして形にすることに絞ります。


プロジェクト指示・資料・チャットの違い
プロジェクトを使いこなす鍵は、入れるものを3つの置き場所に分けることです。ここが、この記事でいちばん大事なところです。
| 置き場所 | 入れるもの | 学習塾の例 |
|---|---|---|
| プロジェクト指示 | 役割・口調・回答ルール・出力形式 | 丁寧なLINE文にする/結論から書く/推測しない |
| 情報源・資料 | 回答の根拠になる事実 | 料金表、FAQ、授業時間、入会案内 |
| チャット | その都度の依頼 | 「週2回の料金を聞かれたので返信を作って」 |
役割やルールは「プロジェクト指示」に、正解となる事実は「情報源」に、今回の依頼は「チャット」に。この3つを混ぜないことが、あとで事故を防ぎます。
補足として、ChatGPTには回答のしかたを指定する「プロジェクト指示」と、資料を置く「情報源」が分かれて用意されています。プロジェクト指示は、そのプロジェクト内の回答方法を指定する場所です。Claudeにも同じように、指示とプロジェクトナレッジがあります。役割や口調のような回答ルールは、資料に混ぜるより、プロジェクト指示に書くのが適しています。
まずは10分で、最小構成を作る
はじめは、次の流れで十分です。
- 毎回説明している仕事を一つ選ぶ(例:保護者へのLINE返信)
- その仕事専用のプロジェクトを作る
- AIの役割と回答ルールを、プロジェクト指示に書く
- 料金表やよくある質問などの資料を、情報源として追加する
- チャットで、一文だけ依頼してみる
- 金額や条件、参照した資料が正しいかを確認する
- ずれていたら、指示か資料のほうを直す
最初は一つの業務と、1〜3個の資料だけで構いません。小さく作って動かすところから始めます。
プロジェクト指示は、プロジェクトの設定画面から入力します。ChatGPTでは、プロジェクト右上の「…」から「プロジェクト設定」を開き、「プロジェクト指示」に貼り付けます。Claudeでは、プロジェクト内の「プロジェクト指示を設定」から入力します。ここに、さきほどのテンプレートを入れます。
資料の追加は、別の場所から行います。プロジェクトの画面で情報源を追加でき、ファイルのアップロードのほか、テキストを直接貼り付けて追加することもできます。

プロジェクトには、ファイルのアップロードやテキスト入力で情報源を追加できます。
コピペできるプロジェクト指示の例
役割と回答ルールは、次の形をそのまま貼り付けて、自分の状況に合わせて書き換えると早いです。これはプロジェクト指示に入れる内容です。
【目的】
地域の個別指導塾の集客と、保護者対応を手伝ってください。
【役割】
小さな学習塾の広報・事務担当として回答してください。
【回答のルール】
・保護者にそのまま送れる、丁寧でやわらかい日本語にする
・最初に結論を書き、その後に必要な補足を書く
・金額、授業時間、制度については、プロジェクト内の資料を確認する
・料金については「料金表」を最優先する
・資料同士に矛盾がある場合は、勝手に判断せず矛盾を指摘する
・資料に書かれていないことは推測しない
・必要な情報が不足している場合だけ、確認事項を質問する
【LINE返信の形式】
・200〜300文字程度
・絵文字は原則使わない
・不要な前置きを増やさず、そのまま送れる文章だけを書く
ポイントは、料金は「料金表」を最優先する、資料にないことは推測しない、矛盾があれば指摘する、という3つのルールを入れておくことです。こうしておくと、AIが資料にない情報を補ったり、食い違う資料から独自に判断したりするリスクを減らせます。判断できないときは、その状態を回答に表しやすくなります。
業種が違う場合は、次のひな型を埋めるところから始められます。
【目的】
このプロジェクトで達成したいことを書いてください。
【あなたの役割】
〇〇の担当者として回答してください。
【回答のルール】
・回答前に、プロジェクト内の資料を確認する
・資料に書かれていないことは推測しない
・資料同士に矛盾がある場合は、その箇所を知らせる
・情報が足りない場合は、必要な確認事項を質問する
・重要な判断を、確認なしで確定しない
【情報の優先順位】
1. 〇〇
2. 〇〇
3. 〇〇
【出力形式】
用途、長さ、文体、含める項目を書いてください。
料金表やFAQを情報源として追加する
事実にあたる情報は、役割とは分けて、情報源として置きます。学習塾なら、次の3つに分けると整理しやすいです。
- 料金表(月額、入会金、教材費、割引、支払い方法)
- よくある保護者からの質問(入会、振替、両立などの回答)
- 塾の特徴と運営方針(対象、強み、方針)

用途ごとに情報を分けておくと、更新や確認がしやすくなります。画面内の「学習塾の運営アシスタント」は、説明のために情報源として追加したものです。本記事で推奨する構成では、役割と回答ルールはプロジェクト指示に設定します。
資料を作るときは、次の点に気をつけると、あとで事故りにくくなります。
- 一つのファイルに、無関係な情報を詰め込みすぎない
- ファイル名に、対象や年月を入れる
- 本文の先頭に、最終更新日を書く
- 古い料金表を残したままにしない
- 同じ情報を、複数のファイルに重複させない
たとえば料金表なら、ファイル名と本文の先頭を次のようにしておきます。人が資料を管理しやすくなり、AIにも更新時期を明示できます。ただし、新旧の資料を両方残すのではなく、不要になった旧版は削除してください。
ファイル名:料金表_2026年8月版.txt
本文の先頭:最終更新日 2026年8月1日
情報は、多ければ多いほどよいわけではない
プロジェクトには、今回の仕事に必要な情報だけを置きます。古い資料や似た内容のファイルが複数あると、人にとってもAIにとっても、どれを基準にすべきか分かりにくくなります。
特に問題になるのは、情報量そのものよりも、次のような状態です。
- 新旧の料金表が両方残っている
- 同じ質問への回答が、複数のFAQで食い違っている
- 一つのプロジェクトに、別の案件や業務の資料も入っている
- ファイル名や本文に更新日がない
資料が増えてきたら、追加するだけでなく、古いものを削除し、案件や用途ごとにプロジェクトを分けます。必要な資料と、どれを基準にするかが分かる状態を保つことが大切です。
実際に質問して、回答と参照元を確認する
資料を入れても、金額や条件がいつも正しく拾われるとは限りません。最初の数回は、根拠もあわせて出してもらい、確認する使い方をおすすめします。
チャットで、こう頼みます。
返信文を作り、その下に、参照した資料名と、金額の根拠を簡潔に書いてください。
出てきた返信は、次の項目で確認します。
- 正しい学年とコースを参照しているか
- 月額と初期費用(入会金や教材費)を混同していないか
- 古い資料を参照していないか
- 資料にないことを付け足していないか
- 保護者にそのまま送れる口調になっているか


うまくいかないときに確認すること
思ったように動かないときは、たいてい次のどれかです。
- 一つのプロジェクトに、無関係な仕事の情報まで詰め込んでいる
- 古い資料と新しい資料が混ざっている
- 役割の指示と、料金などの事実が、一つの長文に混ざっている
- 資料にないことを推測しないよう、指示していない
- そもそも、資料のどこにも質問への答えが書かれていない
- 最初から、確認なしの完全自動化をしようとしている
回答がずれたら、まず「指示が悪いのか」「資料が足りないのか」「資料同士が矛盾しているのか」を分けて確認します。指示と資料を分け、古いものを消し、足りない事実は資料に足す。これで、たいてい落ち着きます。
入れてはいけない情報と、資料を古くしない工夫
便利さの一方で、置く情報には注意が必要です。少なくとも次は守ってください。
- APIキー、パスワード、秘密鍵は入れない
- 生徒名、学校名、連絡先などは、必要がなければ削除する
- 相談文を作るだけなら、「生徒A」「中学2年生」のように置き換える
- 個人情報を扱う必要がある場合は、利用中のプラン、データの取り扱い、共有範囲、社内ルールを確認する
- プロジェクトを共有する前に、過去のチャットや資料も共有対象になるかを確認する
- AIが作った返信を、確認せずに保護者へ自動送信しない
特にChatGPTの共有プロジェクトでは、権限に応じて、参加者がチャットやファイル、指示を見られます。共有するときは、今ある資料だけでなく、プロジェクト全体を確認してください。
資料は、作って終わりにせず、更新日を書いて古いものを消していく。これだけで、間違った前提を参照し続ける事故を減らせます。
次の段階:プロジェクトの外の情報も使う
プロジェクトに慣れてきたら、手元の資料だけでなく、外部のサービスや社内のデータとつなぐ方向もあります。MCPやAPIといった仕組みを使うと、参照できる範囲を広げたり、一部の作業を仕組みにしたりできます。
ただ、最初からそこを目指す必要はありません。まずは指示と資料を整理して、毎回の説明を減らすところで十分です。外部データとつなぐ具体例はClaude CodeとGA4をMCPでつなぐで、定型作業を仕組みにする話はGASで定型業務を自動化するで扱っています。慣れてから読むと、つながりが見えてくるはずです。
今日からの一歩
最初の一歩は、小さくて構いません。今週、AIに2回以上説明した内容を、一つ思い出してください。
その内容を「回答ルール」と「参照する資料」に分けて、一つのプロジェクトに置いてみます。ルールはプロジェクト指示へ、料金やよくある質問のような事実は情報源へ。これだけで、次の会話から前提の説明がぐっと減るはずです。
まとめ
- AIの回答は、その時点で参照できる会話、指示、資料、記憶などに左右される。確実に使ってほしい情報は、指示か資料として明示的に置く。
- 入れるものは「プロジェクト指示(役割・ルール)」「情報源(事実)」「チャット(依頼)」の3つに分ける。
- 役割と回答ルールは、コピペできるテンプレートから始めると早い。
- 資料は用途ごとに分け、ファイル名と更新日を書き、古いものは消す。
- 情報は多いほど良いわけではない。無関係・古い・重複が増えると基準が分かりにくくなるため、規模が大きくなったら整理する。
- 資料を入れても正確さは保証されないため、大事な金額や条件は根拠を出させて人が確認する。
ここまでの手順は、まず一つの業務で試すのがいちばんの近道です。自社の業務で、何をプロジェクト指示に書き、どの資料を整えればよいか迷うときは、今の業務を見ながら、プロジェクトの構成、参照する資料、確認のルールまで1対1で整理します。


