同じことを聞いているのに、AIの答えがずれる。あいまいに聞くとあいまいな、それっぽい答えが返り、条件を丁寧に伝えると急に的確になる。じつはAIの答えのずれやすさは、聞き方によって変わります。
AIが事実でない内容をもっともらしく作ってしまう現象を、ハルシネーションと呼びます。なぜ起きるのかはなぜAIは嘘をつくのかで整理しました。この記事は、その手前の話です。答えを受け取ってから確かめるのではなく、そもそも嘘が出にくいように、事前の聞き方で減らすコツをまとめます。


なぜ聞き方で変わるのか
AIは、渡された文章(文脈)を手がかりに、次に続く言葉を予測して答えを作ります。文脈が薄いと、学習した一般的・平均的な知識で空欄を埋めるため、自社固有のことや最新のこと、細かい条件でずれやすくなります。
逆に、答えるための文脈を先に厚く渡すほど、AIはその文脈に沿った答えに寄り、当てずっぽうで埋める余地が減ります。以下は、その「文脈を厚くする」「埋めさせない」ための具体的なやり方です。
前提と条件を先に渡す
AIは、足りない情報を「それっぽく」埋めてしまいます。だからこそ、埋めさせる前に、こちらから前提を渡してしまうのが効きます。
たとえば「見積書の書き方を教えて」ではなく、「日本の小規模なWeb制作の個人事業主が、法人向けに出す見積書。消費税は外税で、という前提で書き方を教えて」と伝える。誰向けか、どんな状況か、何を重視するかを先に固めるほど、AIが当てずっぽうで補う余地が減り、答えが的を射やすくなります。
答えの範囲を狭める
質問が広いほど、AIは広く、浅く、それらしく答えます。逆に範囲を絞ると、質問の意図に沿った答えになりやすくなります。
「AIについて教えて」ではなく「生成AIが嘘をつく理由を、初心者向けに3点で」のように、テーマ・観点・分量を指定します。範囲が狭いと、関係の薄い話まで無理に広げにくくなり、崩れる場面が減ります。
存在を決めつけて聞かない
意外と多いのが、質問の仕方そのものが嘘を誘発するケースです。「〇〇という機能の使い方を教えて」と、あるかどうか分からないものを前提にして聞くと、AIはその前提に話を合わせ、ありもしない使い方を作ってしまうことがあります。
まずは「〇〇という機能はありますか。無ければ無いと答えて」と、存在から確認する。誘導するような聞き方を避けるだけで、無理に話を合わせて生まれる嘘を減らせます。
分からないときは、分からないと言わせる
AIは、空欄を嫌ってなんでも埋めようとする傾向があります。ここに、ひとこと添えるだけで変わることがあります。
「確実に分かることだけ答えて。分からないことは、分からないと言って。推測なら推測だと明記して」と伝えておく。さらに「不確かな点や、追加確認が必要な点を挙げて」「他の可能性があれば併記して」と頼むと、確認すべき箇所を整理しやすくなります。


根拠と確認材料を示させる
結論だけを受け取ると、間違っていても気づけません。そこで、結論だけでなく、前提にした情報・根拠・参照した箇所・計算式などを併記させると、人が間違いを見つけやすくなります。計算なら途中式を示させ、別の方法でも結果が一致するかを確認させるのも一つの手です。
ただし、AIが筋道を説明できたこと自体は、答えが正しい証明にはなりません。あとから、もっともらしい説明を付けているだけのこともあります。あくまで、人が確認しやすくするための材料として出させる、と捉えてください。
知識の外は、記憶で答えさせない
最新のこと、専門的な事実、自社固有の情報は、AIが学習で持っていないことが多く、記憶で答えさせると当てずっぽうになりがちです。こうした問いは、記憶の外から根拠を持ってこさせるのが基本です。
具体的には、Web検索ができるモードやツールを使う、あるいは答えの材料になる資料を自分で渡す。「知らないことは調べてから、出典付きで答えて」と方針を先に伝えておくのも有効です。AIの記憶に賭けるのをやめ、確かな材料の上で答えさせる、という発想です。
資料を先に渡すと、さらに変わる
この「材料を渡す」を突き詰めた一手が、答えの材料になる資料そのものを先に渡してしまうことです。社内の手順や正しい情報を短くまとめ、「この内容だけをもとに答えて」と渡す。すると、AIはあいまいな記憶ではなく、目の前の資料を材料に答えるので、自社固有のことや細かい事実でもずれにくくなります。
この考え方を仕組みにして、質問のたびに関連資料を自動で探して渡すのがRAGという方法です。本格的に精度を上げたいときの有力な方法なので、手応えをつかんだら覗いてみてください。ただしRAGも、検索がずれたり資料と食い違ったりすれば嘘は残るため、確かめる工程は引き続き必要です。
それでも、確かめる工程はセットで
どれだけ聞き方を工夫しても、嘘はゼロにはなりません。数字・固有名詞・日付・お金や契約に関わることは、最後に確かめる。減らす工夫と、確かめる工程は両輪です。確かめ方はAIの答えを見抜く・確かめる方法で整理しました。
今日やれる:嘘を減らす聞き方チェックリスト
大事な質問をする前に、次を確認するだけで答えの質が変わります。
- 前提を書いたか。 誰向け・どんな状況・何を重視するかを先に渡す。
- 答えの範囲を絞ったか。 テーマ・観点・分量を指定する。
- 存在を決めつけていないか。 あるか不明なものは「無ければ無いと答えて」と確認する。
- 逃げ道を用意したか。 「分からなければ分からないと言って。推測は推測と明記して」を添える。
- 根拠と確認材料を示させたか。 結論だけでなく、前提・根拠・途中式も併記させる(説明できたこと自体は正しさの証明ではない)。
- 知識の外は、検索や資料に頼らせたか。 最新・専門・自社固有は、記憶で答えさせない。
- 大事な数字や固有名詞は、確かめる工程とセットにしたか。 聞き方の工夫だけで安心しない。
次の一歩
- AIの答えのずれやすさは聞き方で変わる。文脈を厚く渡すほど、勝手な補完や意図のズレが減る。
- コツは「前提と条件を渡す」「範囲を狭める」「存在を決めつけない」「分からないと言わせる」「根拠と確認材料を示させる」。
- 最新・専門・自社固有は、記憶で答えさせず、検索や資料に頼らせる。
- ただし聞き方だけで嘘はゼロにならない。大事なことは確かめる工程とセットにする。仕組み化する代表的な方法がRAG。
聞き方のコツは、知れば今日から使えます。とはいえ、何をどの順で身につけると仕事に効くかは、一人だと迷いがちです。AIとの付き合い方も、あなたの目標から逆算した学ぶ順番の一部として、1対1で一緒に整理できます。


